
妖精の女王と話がしたいというアピスの望みを叶えるために、ミヤビはテレパシーを使って姉のミツキを呼び出しました。すると女王ミツキが小さな妖精の姿を借りて『こんにちは』と言いながらやってきました
『妹に呼ばれたので来ました。』
『えっ!この声…もしかしてミツキ!?』
小さくなった女王にサニアちゃんは興味津々で、蝶のように舞うその優雅な姿をみて思わず捕まえたくなって
キャッキャとはしゃいで嬉しそうに追いかけ回しました
『それで…わたくしに話とは何でしょう?』
サニアちゃんにギュ~ッと弄られながら女王はアピスに問いかけます
やっと女王と話せるようになり、アピスは『あなた達も聞いて頂戴。きっと関係あるから…』と前置きし、
みんなに”自分の国で起きている事”を打ち明けました。
『私は小さな頃からクラウディア王女の教育係だったの。とても聡明で、民や家臣たちの事をいつも一番に考える優しい方だったわ。でも半年ぐらい前に母君…先帝が崩御されて、クラウディアが新たに魔導女帝に即位したの
それからの彼女は人が変わったようにオーヴに魅入られちゃって……』
魔導女帝となったクラウディアは彼女たちがオーヴと呼んでいる
彼女はその「地上侵攻計画」に反対したために処刑されそうになり、命からがら地上へ逃げてきたそうです
妖精の女王は身の危険も顧みずにその事を伝えに来てくれたアピスに感謝するのと同時に、
魔法使いたちの愚かな行いを知って憤慨しました
『それは許せませんね。星母樹の力をそのように悪用したばかりか、地上を侵略しようなどとは…
よくもそんな恐ろしい事を企てるものです。』
アピスはその言葉を聞いていたたまれなくなります
『…最近、地上人を憎む魔法使いが増えてきたの
昔はそこまでじゃなかったのに、みんなおかしくなっちゃって…それで私、みんなの暴走を止めるためにクオンを目指す事にしたの。妖精の女王なら星母樹と一心同体だしきっと全てを解決してくれると思ったから…』
アピスは縋るような目で女王を見ますが、その返答は意外なものでした
『勿論その話が本当なら協力は惜しみませんが…
妖精の女王と言ってもわたくしやミヤビは星母樹の世話をする巫女に過ぎません。あなたが言うように全てを解決できる程の大きな力はわたくしには無いのですよ。残念ながら。』
『え?そんなはずは…だってあなたは……』
アピスは何か言おうとしますが、サニアちゃんがいきなり駄々をこねだして話を中断させてしまいました。
『何しゃべってるのかわかんない!!
サニアつまんなぁ~い!!』
話が難しくてチンプンカンプンだからか、サニアちゃんは我慢できなくなったようです
その時…突然地面が揺れ、外で大きな音がしました
サニアたちは急いでテントから飛び出して空を見上げると、見た事も無い”巨大な物体”が浮いていました。
『なんか超でっかいのいる!!』
三角岩の形をした奇妙な飛行物体はグォングォンと不気味な音を立てて、まっすぐクオンの都がある方に向かって飛んでおりました。その頂上で「青い何か」が光ると、空が分厚い雷雲に覆われ、稲妻が鳴り響きました
『あれは…《魔導要塞ウォルカーヌス》
まさかもう動き出すなんて…!』
それはフリューゲルから飛来した要塞型の「魔導兵器」でした
アピスは魔法使い達がこれほど早く動き出した事に驚き、巨大要塞から放たれるプレッシャーにその場にいる誰もが凍り付きます
『ヤロウ…!
あんなもんに襲われたらクオンは終わりだぜ!!』
ミヤビちゃんは『そんな…!』と涙を浮かべて、ヘナヘナと地べたにへたり込んでしまいました
『落ち着いて…あれを止める方法ならあるわ
魔力の源のクリスタルを破壊すれば、要塞は動力源を失って停止するはずよ』
動力源のクリスタルの破壊…アピスは冷静に、それが要塞を止める最良の手段だと言いました。ただし要塞は遥か上空に浮いていて、空を飛べる者でなければ辿りつく事さえできません
それを聞いたサニアちゃんは思い切った提案をします。
『サニアが飛んでこわしてくる~!』
サニアちゃんは戦いたくてウズウズしているようです
けれども、いくら強くてもまだ幼い彼女をたった一人で危険な場所へ行かせる事にミヤビちゃんは反対します
『ひとりで行くなんてダメ!!
みんなで考えれば…もっと良い方法があるよ!』
しかし…こうしている間にも要塞はどんどんクオンの都に迫っていて一刻の猶予もありません
そんな時、姉のミツキが妹のミヤビに対して言いました
『心配いりません。わたくしがついていって、この子を守りますから』
小さな妖精の姿になっているとは言え、最上級の回復魔法に加えて結界魔法も使える妖精の女王が一緒に行くとなればこれほど心強い味方はいません。ミヤビちゃんも『ミツキお姉ちゃんが一緒なら』と、しぶしぶ聞き入れました
『要塞の頂上に青いクリスタルがあるはずよ…
なるべく目立たずに動いて、それを破壊したらすぐに要塞から離れるのよ…気を付けて……』
サニアは『まっかせて!』と言い、炎の翼をバサバサと広げて飛んでいきました
要塞の周囲には分厚い雷雲と乱気流が発生していて、そのままでは近づけないと判断した妖精の女王は雷と暴風からサニアを守るため結界魔法を使って彼女の体を優しく包んであげました
『わぁ…この中あったか~い!ミツキって、こんなコトできたんだね!』
『女王ですから。』
荒れ狂う突風の中をサニアは女王の結界に守られながら進み、二人は遥か上空の魔導要塞に乗り込みました。
『おや?これは珍しい客がきたな』
要塞の頂上にある庭園のような場所で、サニアと妖精の女王は赤と黒のスーツを着た「仮面の男」と対面しました
『六花の羽…妖精の女王か、会うのは久しぶりだな』
『デイモス卿…!
あなたがこの要塞を操っていたのですか』
二人は互いに面識があるようでした。デイモス卿と呼ばれた仮面の男は身なりこそ紳士的なものの、手に持った本からは邪悪な魔力が溢れ出し、彼が相当な実力者である事を示しています。その背後には青く光るクリスタルがありました
『青いクリスタル!
あれをぶっこわせばいいんだね!』
サニアちゃんは走って近付こうとすると突然、クリスタルがレーザーを発射しました。
足元にレーザーを撃たれてサニアちゃんはビックリします
『いけない子だ…クリスタルを壊そうとするとは
そんな事をすればこの要塞が機能停止し、使い物にならなくなると知っていてやろうとしたのかな?私がそれを黙って見ているとでも思っているのかね。とはいえ、その勇気と行動力は評価してあげるよ』
サニアは怒った顔でデイモス卿を睨みつけました
『あんたたち…だいっきらい!
アピスをいじめて、ミヤビを泣かせてさっ!あんたなんかサニアがやっつけるから!!』
「このヒトのせいで大好きな友達が苦しめられてる」
怒りで我を忘れそうなサニアちゃんをみて、妖精の女王は呼びかけて”当初の目的”を思い出させました
『忘れてはなりません。わたくし達がここまで来たのは敵を倒すためではなく、要塞を停止させて魔法使い達の侵略を防ぐためです。今はあれの破壊に集中しましょう』
デイモス卿は「チッ」と舌打ちしました
『やはりな。あの泥棒娘め…
我々の事をずいぶんと言いふらしてくれたようだ。しかし邪魔はさせん…今からこのウォルカーヌスでクオンを攻め落としてくれる。オーヴに加え、星母樹も我らフリューゲルが手に入れるのだ!』
『そして、ゆくゆくはこの地上世界全てを我らの領地にしてくれるわ!』とデイモス卿は高笑いしながら言いました
妖精の女王は『何て愚かな…』と不快感を露わにします
アピスが語ってた通り、魔法使いたちは魔導兵器を使って地上を侵略する悪しき計画を企てていたのです
そのあまりの悪役っぷりにサニアちゃんは自分がここで戦って倒すしかないと強く思いました。

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