サニアと伝説の火炎魔法


ほのおつばさのヒミツ

ミヤビちゃんと都会観光を楽しんだサニアちゃんは
日が暮れた頃、他の二人と合流してみんなで一緒にホテルに泊まる事になりました

『わぁ!すずしい~♪』
『外は暑かったね。たくさん汗かいちゃった』

クーラーが効いてひんやりしたロビーをサニアちゃんは嬉しそうに駆け回っています。ホテルまで走ってきたおかげでアピスちゃんはすっかりヘトヘトになり、ミヤビちゃんは『大丈夫?』と彼女を気遣いました。女の子達の中では彼女が一番年上ですが、背が低くて歩幅が狭いのもあって一番疲れている様子でした

『だらしねーなチンチクリン娘、これぐらいの移動でバテるとか話にならんぜ!
旅するなら俺様みたいにもっと体力つけねぇとな~!』

ライの言動にミヤビちゃんはムッとします

『気にしなくていいよ、誰でも得意なコトと苦手なコトがあるんだから!
疲れたら無理せずあたしに言ってちょうだい!』

アピスちゃんは目をぱちくりさせて『その言葉…シルフィナ様が口癖のように言っていたわ!』と言いました。するとミヤビちゃんは『偶然!あたしはミツキお姉ちゃんにいつも言われたよ!』と返し、二人は楽しそうにお喋りし始めました

『何だ?急に元気になりやがって…
まぁいい、とっとと部屋を借りるぞ!宿賃は俺様が払ってやるからよ!』

ライは大人料金12000ソルを払い、みんなで宿泊できる大きな部屋を借りました

『あれ?サニアたちはおカネいらないんだね』
10才以下の子供はみんな無料(タダ)なんですって。』

あのでっかいフネに乗れるの!?』
『おう、大型クルーズ船《シルヴァレーヌ号》だ
人気過ぎてチケットを手に入れるのには苦労したぜ。俺様とチンチクリン娘に感謝しろよ!』

『…本当は例の事件の影響でキャンセルが続出して
あっさり手に入ったんだけどね』
とアピスちゃんは身も蓋も無い事を暴露しました

『おい、バラすんじゃねぇ!』と狼狽えるライに対して彼女は『だって事実だもの。ウソをついて恩を売ろうだなんて不誠実で卑怯な大人のやり方よ』と反論します。ライは言い返せなくて「このガキィ~」と歯ぎしりしました

サニアちゃんは丘の上で見たあの豪華客船に乗れるのが嬉しくてチケットを見るのに夢中で、
二人のやり取りも全然聞こえてない様子でした

『気になる?実は私も乗ってみたいと思ってたのよ
シルヴァレーヌ号は風と水と雷の3種類のラルムの力で動いているらしいの。揺れが少なくて、とっても快適なんですって!』

サニアちゃんが『ラルムって何?』ときいてくるので、アピスちゃんは”この世界の成り立ち”を丁寧に教えてあげました。

『私たちの生活は星母樹が生み出す《命の雫》ラルムによって支えられているの。例えば明かりをつけるには雷のラルムが必要だし、作物を育てるためには地や水のラルムが必要。魔法だってラルムが無いと使えなくなっちゃうし
いわば世界を形作る自然の力そのもの
なのよ。』

サニアちゃんはウーンと悩んでて、ちっとも分かってなさそうです
そこでアピスちゃんはある事を彼女に教えました

『知ってる?あなたも気付かない内にラルムを使いこなしているのよ。だって《火の魔法》で翼を形成して空を飛んでいたじゃない。あんなに上手に火のラルムを操れる人は私が知る限り魔法使いの中にもいないわ。』

上手だと褒められてサニアちゃんはエッヘンといばりました

『でもね、お姉ちゃんはサニアよりもっと上手にツバサを使えるんだよ!オババ様はもっともっと上手だよ!
サニアはお姉ちゃんに使い方教えてもらったの!』

“火炎竜凰”アルフィニーク
それがサニアがいつも使う翼の魔法の呼び名でした

炎の翼を召喚して空を飛ぶ能力は炎を操るドラゴンたちの中でも伝説と呼ばれている強力な魔法で、「王族」だけが有していました。それは魔法使いのアピスちゃんから見ても相当高度な魔法なのだそうです

『聞いた事があるぜ…世の中には《特級魔法》つって、限られた奴だけが使える超強力な魔法があるんだってよ!チビガキが使ってる炎の翼もその中の一つだったってワケか。通りでやたらと強ぇ訳だぜ』

『ん?そういやヘッポコ見習い、オメェの魔法…』
ライはミヤビちゃんに何か聞こうとしましたが、彼女はどこかに出かけていて部屋にいませんでした

『ミヤビはねー、ヒミツの特訓してるんだよ!』
『あ?何だよ秘密の特訓って』

サニアちゃんは悪戯っぽく笑って「ヒミツだから教えない~!」と言いました。ライはカチンときてサニアちゃんの頭を拳でグリグリします。すると彼女は『イタイ!何すんのーっ!』と怒り、お返しとばかりに彼の顔を蹴っ飛ばしました

ボカスカと喧嘩をはじめた二人をアピスちゃんは『どうしよう…』と困惑した顔で眺めたのでした。


海辺にぽつんと立って悩んでいるミヤビちゃん
魔法使いとの戦いで自分だけ活躍できなかったのを彼女はずっと気にしていた様です

『(あたしも…ミツキお姉ちゃんみたいに特級魔法が使えたらいいのにな)』

彼女たち妖精族は月光のラルムを用いた《月光魔法》が皆生まれつき得意でした。しかし、ミヤビちゃんはその中で一番簡単な治癒術しか使えず、どれだけ練習しても姉のように結界魔法を使う事ができなくて悔しい思いを抱えてきました

ミヤビちゃんは「今度こそは」と静かに目を閉じ、両手を前にかざして結界を出そうとしますが、
やっぱり何度やってもうまくいきません…

『(このままじゃダメ…もっと練習して、
お姉ちゃんみたいにみんなを守れる人になりたい!)』

ただ怪我を治すだけじゃなくて仲間が傷付かないように敵の攻撃を防ぐ力が欲しい…彼女はそう思い、
一人で必死に魔法の特訓に励んでいたのでした。

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