みなしごアピスと優しいグリモワールさん


はたらもののアピスちゃん

リップルさんの宿屋に宿泊中、アピスちゃんはせっせと仕事に勤しむグリモワールさんを見て自分もなんだか無性に仕事したくなり、朝から夕方までずっと彼女にくっついてお手伝いしていました

『ごめんなさいね、一日中手伝ってもらって。本来これはワタシとリップルさんの仕事なのに…』
『いいの♪タダで泊まるのも悪いし、私も8つだからしっかりしなくちゃ』

洗濯物を取りこみながら嬉しそうに鼻歌を唄うアピスちゃんに、グリモワールさんはやや驚いた様子で言いました

『8つ?てっきりアピスはもっと幼い子だとばかり思っていました…』
それを聞いたアピスは『よく言われるの』と苦笑い

『リップルさんってとっても素敵よね。脚が長くて、胸も大きくてさ…
私も早くあんな魅力的なオトナの女性になりたいなー』

「成長した自分の姿」を想像してウットリしているアピスにグリモワールさんは言いました

『うっふっふ…大丈夫ですよ。アピスは将来、美しいレディに成長する事でしょう!
ワタシのパーフェクトな星占いでそう出ていますから』

『本当!?嬉しい!』

グリモワールさんに思わず抱きつくアピスちゃん
普段から幼いリトアの面倒をみてあげているしっかり者の女の子とはいえ、
彼女自身もまだ子供なので自分以上にしっかり者なグリモワールさんの前では年齢相応に甘えたい気持ちがあるようです

その姿はまるで「姉妹」のようでした

『さて、次はアイロンがけしましょうか。アピスも手伝ってくれますね?』
『うーん…やった事ないけど、やってみる!』

うっかり高温の部分を触ってしまい、熱い思いするアピスちゃん

『ううっ…手をやけどしちゃった……!
アイロンがけ、本で読んだ事あったけど実際やると結構難しいわ…』

あまりにも熱かったのかアピスは涙を浮かべて、真っ赤に腫れた手を見つめます

『大丈夫ですか?手当するのでじっとしてて下さい…
それにしてもアイロンを知らないとは…お母さんがやっている所を見た事はないのですか?』

グリモワールさんの問いかけにアピスは悲しそうにうつむきました

『お母さんは…私が5つのとき地上に旅立ったの
それに私が暮らしていたフリューゲルでは、服やスカートは全て「魔法繊維」でつくられていて、
皺が勝手に消えてくれるから、いちいちアイロンがけをする必要がなかったの』

アピスが孤児みなしごだと知ったグリモワールさんは『そうでしたか…』とだけ呟き、それ以上は何も言いませんでした
その代わりアピスの頬を優しく撫でてあげました

『苦労してきたでしょう…せめて今、ワタシには甘えても良いですからね
アナタの母親代わりにはなれませんが…ね。』

アピスは大きくてクリクリした目をぱちくりさせ、初めはきょとんとしていましたが
グリモワールさんの言葉に甘える事にし、彼女の身体に寄りかかって、温かさと安らぎに満ちた表情でゆっくり目を瞑りました

『…ありがとう』

グリモワールさんの優しさに、アピスはお母さんの温もりを思い出していました

余談…

彼女たちのいる机の下で何故か白目を剥いているオックス
どうやら彼はグリモワールさんに薬の実験台にされたらしく、副作用で全身麻痺して動けなくなっています

『(がはっ…何だこの扱いの差は……!!)』

そんな事は知る由もなく、机の下で靴を脱いで無防備な素足を露わにしながらリラックス中※のアピスちゃん…
真下にいたオックスは彼女の足や靴から漂う何とも言えないムレた香ばしい匂いにより、だんだんと意識が遠くなっていくのでした

※白い革靴を一日中履いていたアピスちゃんは、やはり靴の中が暑くてたまらない様子。
綺麗好きな上オシャレ好きの性格で「ラベンダーのコロン」を好んでつけたり、ほのかに石鹸の香りがしたりと基本いい匂いがするアピスちゃんなのですが、通気性の悪い革靴を素足でじかに履いているので、やっぱり足はそれなりに結構ムレちゃうそうです。まだ子供なので足がにおっちゃうのは気にしない!

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