フリューゲル魔導物理学校に通う8歳の少女アピスはこの日、最も過酷だとされる「試練の門」の卒業試験を最年少で突破した事で、お城で催されるお祝いパーティで無理矢理主役に担ぎあげられてもみくちゃにされるのでした。
『ハァハァ…ようやく一人っきりになれた
みんなに注目されるのって、どうしても好きになれないわ…』
逃げるように走って城を飛び出したアピスは深呼吸し、ゆっくりと島の端の方へ歩きだしました
『いい風……
お母さんにも見せたかったな…私が魔法使いになった所……』
アピスは崖のそばに立ち、夜風にあたりながら地上へ行ってしまった母ダムキナのことを思い出します
卒業試験に合格して「一人前の魔法使い」として認められ、学校の外でも自由に魔法が使えるようになった彼女はもう高ぶる気持ちを抑える事ができません。ずっと思い描いていた夢への第一歩を踏み出したのです
『もうすぐお母さんに会える 魔法が使えれば地上までひとっ飛びだもの!
地上人に捕まったら私も火あぶりにされるかもしれないけど…それでも!この思いは止められないんだから!!』
アピスが一人でテンション高くしていると、突如「ドゴォーン!!」と大きな音が鳴り響きました
『きゃあっ!!な 何!?』
突然の轟音にビックリして飛び上がるアピスちゃん
うしろを振り返ると凄まじいカミナリが閃光や轟音とともに森の中へ大量に降り注いでいくのを目撃しました
それは明らかに自然現象ではない《魔法の力》によるものでした
気になったアピスは何が起きたのか確かめるために、落雷のあった「ランプランツスの森」に足を運びます
『ハァ、ハァッ…!』
森の奥を目指して一生懸命走るアピス
何かに呼ばれるように、落雷があった場所へと辿りついた彼女は息も絶え絶えな様子でした
森の奥はチラチラと炎が燃え盛り、焼けるような熱気と草が焦げる匂いに満ちていました
『きゃぁ 熱いっ!
間違いない…ここにカミナリが落ちたんだわ……』
炎が熱くて思わずたじろぐアピスちゃん
しかし冷静に周りを見渡すと、彼女は炎とは違う「何か」が光ってるのに気づきました
それは光に包まれた赤ん坊ぐらいの幼子でした
『なんて温かい光……まさか、私を呼んでいたのはこの子…?』
アピスは「運命的なモノ」を感じてしばしその幼子を見つめていましたが、
幼子が怪我しているのに気づくと彼を抱きあげ、頼れる魔法医の女性が営んでいる宿屋へ連れていく事を決心します
『(この子を助けられるのは私だけ!)』
助けたい思いで必死になり、幼子を一生懸命抱いたままひたすら走り続けるアピスちゃん
走りに走って、ヘトヘトになりながらやっと街の宿屋へ辿りついた彼女は、何とか魔法医に診てもらう事ができました
–リトアを介抱するアピスちゃん–
魔法医のナスターシャに傷を癒してもらいベッドでぐっすり眠った幼子…
アピスは靴を脱いで裸足になり、幼子のそばに座って彼が元気になるまでずっと見守ってあげると決心します
『大丈夫…私がそばについててあげるからね』
ずっと走りっぱなしだった彼女は靴が泥だらけになり、足の裏もマメだらけですが、今は幼子の安否以外考えられません……
この幼子は誰でどこからやってきたのか…?
心配と同時に抑えきれないほど好奇心が高まるのを感じずにはいられないアピス
二人の出逢いはやがてこの世界「ルミナメイス」の運命を大きく変えていく事になるのでした
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