アピスと貴族の少年エルマ


地上ちじょうあこがれ少女しょうじょ

フリューゲルに住む本好きな8歳の少女アピスは、いつものように魔法図書館に足を運んで読書していると、
一人の少年が上の階から『やぁ!』と声をかけてきました

『エルマ君、会いたかったわ!』
『僕もだよアピス。元気そうでよかった』

赤の衣装に身を包んだ9歳の貴族の少年《エルマ》はゆっくり階段を下りてきました
フリューゲルでは、戒律により貴族の子供は庶民の子供と一緒に遊んではいけない決まりになっているのですが、二人は本好き同士でたまにこうして隠れて会っているのでした。

『そうだ!あなたに見せたい物があるの』

アピスちゃんは彼を「隠し部屋」に連れ込むと、一冊の本を広げてみせました

『みて!箒について記された本よ♪
これによれば、大昔の魔法使いたちは箒に乗って空をビュンビュン飛んでいたんですって。
私ね これを自作して地上へ飛んでいこうと思ってるの!

嬉しそうに自分の計画を打ち明けるアピスちゃん
普段は落ち着いていてクールな彼女ですが、地上の事を話す時は高揚感に溢れて声が弾んでいました

しかし、その話を聞いたエルマ君は『僕は賛成できないな』と表情を曇らせます

『地上に行くとか馬鹿げてるよ
アピスのような女の子は火あぶりになるのがオチさ』

アピスちゃんにわざと辛辣な言葉を浴びせるエルマ君

それには、彼女を危険から遠ざけたいという気持ちが隠されていました
1000年前に魔法使いの指導者ナハティガル・ヴァルプルギスによって魔法使いの国《フリューゲル》が建国されるまでは、魔法使いや魔女たちは地上の人々に迫害され、その多くが拷問や火あぶりにされたという悲しい歴史があったのです…

空に移住した彼らは地上との関りを一切断つ事でやっと平和な日々を手に入れましたが、
現在も「迫害された記憶」は根深く残っており、人々は誰もが”地上は恐ろしい場所”だと教えられてきたのでした

『僕のパパも言ってたよ
地上人は、邪悪で救いようがない連中だってさ!』

懐疑的な考えを持つエルマ君はアピスちゃんを説得しようとしますが、かえって彼女を怒らせてしまいました

『あなたがそんな風に考えてるなんてガッカリ…
もういいわ、私帰る!』

アピスちゃんは本をばたん!と閉じると、不機嫌そうな顔して走っていきました
エルマ君はそんな彼女を複雑な表情で見送ります…

『アピス……
僕はただ、君を守りたいだけなのにさ……』

アピスちゃんの事が大好きなエルマ君は、彼女の夢を応援してあげるべきか悩むのでした…

アピスちゃん(8)のコメント

エルマ君に私の計画を話したら猛反対されちゃった
地上人はみんな野蛮人…ですって。たしかに、大昔に地上人が魔法使いたちを迫害した事実は許せないけど…そんな遠い昔の話をずっと引きずってたら私達はいつまでたっても前に進めないわ!
彼なら理解を示してくれると思ったのになぁ…
この国の人達は、一体いつまで地上を怖がり続けなくてはいけないのかしら?
私は地上がどんな所なのか、行ってこの目で見たい!
「本で見た世界」や「今まで教わった事」が本当にあるのか自分の足で歩いて確かめたい!
真実を知るためなら…どんなキケンだって冒す価値はあるはずよ♪

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