フリューゲルの高街に住む9歳の貴族の少年エルマ・ムルシベルは、父親のデイモスと屋敷のテラスで優雅にランチを楽しみながら、このあと「ランプランツスの森」へ遊びに行きたいと話していました
『行くのは構わんが、あそこにはシュパンピルツという電撃キノコが群生しているから用心しなさい。
迂闊に触れたら高圧電流を浴びて黒焦げだよ』
『うん、わかったよパパ!それじゃ行ってきまぁす』
ナプキンで口周りを拭いた後、嬉しそうに走っていく息子をデイモス氏は満足げに見送りました
フリューゲルの階級制度で頂点に序列される上級貴族の「ムルシベル家」の当主であり、子供好きの紳士という異名で通っている彼はたった一人の息子のエルマをとても可愛がっているようです。
しかし、エルマ君はそんな父親にも「隠し事」をしておりました…
森から帰った後、屋敷地下にあるジメジメした水路に一人でやってきたエルマ君
いつも履いている高級な革ブーツが濡れるのも構わず、苔の混じった水の中をぴちゃぴちゃ歩いていった先で、
彼は白骨化した亡骸を見つけました……
森で摘んできたお花を亡骸に添えてあげるエルマ君
『こんな事しかできなくてごめん…ホントは奴隷なんてもの無くせばいいのに…
パパも大人たちも、みんなおかしいよ……』
その亡骸はかつて貴族に仕えて死んでいった奴隷でした
貴族が暮らす高街の地下にはこのような「忘れられた亡骸」が他にも数多く眠っていると言われています
太古から続くフリューゲルの階級制度…
魔法使いの国では魔法が使えない者は蔑まれ、貴族の奴隷として生きるのが当然と考えられてきました。
その事に子供ながらに心を痛めるエルマ君はそんな人々のために時々、食べ物や薬を持っていってあげているそうです。
『この国を変えていかなくちゃ…みんなが幸せになれる国に
奴隷となった人たちや、アピスのためにも……』
魔法使いの国フリューゲルが古くから抱える深い闇……
貴族を継ぐ者として国を憂うエルマ君は、民や友達のため自分にできる事は何かを考え始めるのでした……
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