アピスたちが港町「カンナギ」にやってくる前の晩、リップルさんの宿屋で住み込みのアルバイトをしている魔法使いのふたご姉弟は仕事帰りの客でごった返す夜の食堂でいつものようにせっせと働いていました。
『次から次に注文がくるなぁ…
まぁ、ボクこーいうの大得意だけどね♪』
姉グリモワールが厨房で作った料理を弟ジョバンニが一生懸命走り回ってお客のテーブルに運んでいきます
ディナータイムなのでかなり忙しいですが、動き回るのが大好きなジョバンニ君は『走るのは得意さ♪』と疲れ知らずなようです。
そんな時……
外で遊んでいたナギサ君が『ねぇ!ヒトが倒れてる!』と叫んだのを聞き、ジョバンニ君は急いで見にいきました
『なんだオックスさんじゃないか!
また酔っぱらってるの?しょうがないなぁ~』
道ばたで倒れていたのは飲んだくれで有名な地元の青年「オックス」でした
ジョバンニ君は『いつもの事さ♪』と特に警戒することなく走って彼に近づきますが、足元のヘドロのような液体を踏んでしまい……
ジョバンニ君は危うく靴が溶けるところでした
『くっさァ~!どうなってんの、これ』
オックスは何があったのか体中ヘドロまみれで、猛烈な悪臭でたまらなくなって後ずさりするジョバンニ君…
『アッラ~!こりゃ酔っぱらってドブにでも落っこちたね
向こうに古くなった一号館があるからグリモちゃん、ジョバンニ君、悪いけど彼をそこに運んどいてよ!』
事態を聞いて駆けつけたリップルさんは宿屋の隣にあった古い建物を指さし、
ヘドロまみれのオックスをそこに連れていくよう姉弟に言いました。それを聞いた二人は『え~?』とがっくし
『ボクたちが運べってさ!姉さんどうする?』
『トホホ…仕方ありませんねぇ~!せめて防御魔法をかけて、身を護ってからにしましょう……』
ヘドロをそこら中に巻き散らしながら廃墟に運び込まれるオックスさん
グリモワールさんは怒りに震え、執念深そうに彼を睨みつけていました
『(ぐぬぬ…よくもワタシとジョバンニをこんな目にあわせてくれましたね…
必ず報復してやりますから……)』
『オックスさん、滑って転んでドブに落ちたんだってさ!』
『オックスさんだもの仕方ないさ♪』
騒動後、食堂の大人から経緯をきいて呆れ顔のジョバンニ君とナギサ君
慕われるべき純真な少年たちからもクスクス笑われ、もはやそこに「雄々しいヒーロー」の姿はありませんでした……
『(くそったれ、あまりにも無様すぎるぜ…!!)』
–魔術師少年ジョバンニ(11)のコメント–
オックスさんが助かってよかったけど、うっかりヘドロを踏んじゃってボクの靴が溶けてしまうところだった
あんな臭い思いするのはもう二度とゴメンだよ…!
旅で三日間歩き続けた姉さんのソックスと同じぐらい強烈だったなぁ~
早く終わらせてシャワーを浴びたい気分ですよ
ワタシが一緒に入浴してしっかり身体を洗ってあげますからね
姉さんと風呂入るの里以来だからね!
ね、背中流しっこしない?ボク姉さんの背中流したいな♪
ワタシがちゃんと守ってあげなくては…)
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