ゴム
《砂の大陸》での旅を終え、次なる星母樹を探し求めて《氷の大陸》にある氷河の街シェロアイランドへやってきたアピスたち一行。そこは砂漠の厳しい暑さから一転寒さと氷に包まれた雪国でした
『すごい!ぼくこんな風景初めて見たよ!』
雪景色に興味をそそられたリトアはみんながホテルで休んでいる間に外へ探検に出かけました
彼は氷河を近くで見ようと海岸へ足を運んだ時、氷河の割れ目《クレバス》の奥から可愛らしい歌声が聴こえてくるのに気付きます
『なんて透き通った綺麗な声だろう…
あの洞窟の中から聴こえるようだ。行ってみよう!』
クレバスの洞窟の中はツララだらけで、海水が流れ込んでできた湖に氷がプカプカと浮かんでおり、
その上に「幼い少女」が立って歌を唄っておりました
『わぁ!とっても素敵な歌だ』
その可愛らしさにうっとりして思わず聴き惚れるリトア…
すると少女は演奏をやめ、水の中をバシャバシャ走ってこちらへ近づき『エヘ!見られちゃったの』と照れくさそうに笑いました
『氷のオーケストラへようこそ!
あたしはトート・ヤンソン、4歳なの♪』
その少女「トート」は舌ったらずな喋り方で自分はシェロアイランドの病院長の一人娘だと自己紹介します。
彼女は将来音楽家になりたくてよくここで演奏の練習をしており、自分の歌声をリトアが褒めてくれたのを喜んでいるようでした
ふと水中のトートちゃんの足元を見たリトアは、彼女が履いているゴム長靴の中が冷たい海水で満タンになっているのに気付きます。『足、冷たくない?』と心配すると、彼女は満面の笑みを浮かべて答えました
『平気!あたし、寒いの大好きなの!』
トートちゃんはチルシアンという雪国特有の種族で、寒さにめっぽう強くて《氷の魔法》が使えるのだそうです。
リトアは先ほど彼女が木の枝を杖にし、雪の結晶を召喚して舞わせていたのを思い出しました。
『あのね!まだしばらくここで唄ってるから、よかったら聴いててほしいの♪』
トートちゃんはそう言い再び氷の上まで走って演奏を始めます。
二人はすっかり打ち解けて、アピスとサヤカが心配して探しにくるまでずっと洞窟でコンサートを楽しんでおりました。
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