激突!サニアVS地獄の竜戦士カジャ


ドラゴンの師弟対決していたいけつ

マグマに落ちそうになった危ない所をサニアに助けられ、ドラゴンたちが棲む火山の中からやっとの思いで脱出したアピスでしたが、喜びも束の間…砂漠に降りた彼女たちの前に「新たな刺客」が現れたのでした

『どこ行くんですかい、サニア嬢
ガキが外へ出歩くのは戒律違反だって習いましたよねぇ?
それにソニア様が拾ってきたオモチャまで勝手に持ち出してよぉ…後で厳しいお仕置きが待ってますぜ』

サニアを「お嬢」と呼ぶ威風堂々とした厳めしい巨躯のドラゴン戦士は、ズカズカと重たい足音を立ててこちらへと迫ってきました。その目的は明らかに二人を火山の中に連れ戻す事でした

『(この敵は強そう…私は今、ほとんど魔法が使えないし
どうにかしてこの子だけでも逃がさなきゃ)』

自分はMPゼロ、サニアは足を怪我していて戦える状態ではありません
何とかこの場から逃れられないか思案していると、アピスはうしろから服を掴まれる感触がしました

『どうしたのサニア?』
『・・・・・。』

サニアは体中滝のように汗をかいて、ひどく怯えているようでした

『アイツはカジャ・バルザ・シュードラ
炎のつかい方と、たたかい方をサニアにおしえたひとだよ…』

サニアは震えた声で目の前にいる戦士「カジャ」の素性を明かしました
彼は竜の女王ルティアに仕える上位戦士で、幼いサニアに戦闘を教え込んだ教官だったのです

それを聞いたカジャは『チッ』と舌打ちしました

『あーあー…まじかよ 人の真名まなをばらしてんじゃねぇよこのクソガキがよ
まいったな予定が狂ったよ…』

カジャは何か考えるように頭をボリボリかいた後『その女には気の毒だが…始末しとくか!』と言い、険しい表情へと変わりました。その敵意に満ちた目を見て、彼の標的が自分だと察したアピスはどっと冷や汗が出ました

『(ここにいたらこの子も危ない!)』
アピスは自分の服を掴んでるサニアの手を優しくふりほどくと、彼女を遠ざけるために必死に遠くへ走りました

『逃がさねぇよ!女ぁ!!』

カジャは腕を巨大化させ、高熱の炎を帯びたその手でアピスを後ろから鷲掴みにしました

巨大化した手で身体を絞めつけられて『きゃあっ!』と悲鳴をあげるアピス
その手は焼けた鉄のように高温で、風のバリアで身を包んでいても想像を絶するほどの熱さでした

身動き取れないまま焼かれるという残酷な仕打ちを受けるアピス…
サニアは怖くて震えながら『やめて…殺さないで!』と彼女の命を奪わないようカジャに懇願しました

しかし彼はアピスが熱さに耐えられずに気絶した後も手を緩めず、彼女をこのまま握り潰すつもりのようでした

『ワリィな、エルフのねーちゃん…
真名まなを知られちまった以上は生かしておけねぇんだわ!』

彼女の命が危ない……
そう思った時、サニアは黙って見ていられなくなりました

カジャの拳にキックを当て、サニアは攻撃を中断させました

『アピスはサニアのだいじな友達…
だから護るっ!!』

さっきまで震えていたサニアでしたが、友達を護るために師匠のカジャと闘う決心をしたようです

『お嬢、こんな異種族の娘を護るために俺と闘うんですかい?
別に構いませんがヤルなら容赦しませんよ…ちょうど、アンタにはお仕置きが必要ですからねぇ』

自分の教え子に反抗されてもカジャは怒るどころか嬉しそうでした
サニアの「炎の翼」に対抗して彼も「炎の剣」を生成し、ドラゴン同士による闘いが始まりました

圧倒的パワーのカジャを目にも止まらぬ速さで飛び回って翻弄するサニア
二体の闘いはすさまじく、砕かれた岩の破片が吹き荒れる熱風で空高く舞い上がって激しい稲妻が走りました
両者の力は拮抗していてなかなか決着がつきません

しかし…

『足を痛めてんだろ。分かってんだぜ、お嬢』


サニアがずっと右足を痛そうにしているのをカジャは見逃しませんでした
剣で足を貫かれ、バランスを崩した彼女は地面に猛スピードで激突しました

『ううっ…イタい…!
足がこれじゃ、たたかえない……』

傷ついた両足を手で押さえ、地面にうずくまりながら激痛に苛まれるサニア…
足を両方とも怪我して起き上がれなくなった彼女にカジャは薄ら笑いを浮かべながら近づきました

『へっへっへ…お嬢、悪くない動きでしたぜ
でもこのぐらいで体勢を崩すようじゃあ、まだまだ修練が足らねぇって事ですなぁ!』

カジャは咆哮と共に竜巻を起こしてサニアをその中に閉じ込め、自分の爪でメッタ切りにしました

鋭い爪で全身を切り刻まれ、サニアは大きなダメージを負ってしまいます
カジャは傷つき倒れたサニアの身体を乱暴に持ち上げ、彼女を硫黄が漂う温泉のなかにドボーンと投げ込みました

『そのくっせー湯にでも浸かって回復してろ、ハッハ!』

闘いに勝った後、カジャは向こうで気絶しているアピスを見つけて今度こそ彼女を葬り去ろうと決めました

『ぼちぼち天国へ送ってやるか』

殺意とともに彼女の方へ向かおうとした時…
カジャは突然あらわれた「光の結界」によって動きを封じられました

『ウォッ!まぶし…何だこのチビはぁっ!?』

カジャの動きを封じたのはリトアの「光の結界」でした
続いてオックスが崖の上から現れ、太陽を背にカジャの頭上から強烈な肘鉄を食らわしてダウンさせました

『かはーっ!子供を痛めつけるような
ド腐れ野郎はスーパーヒーローの俺様が成敗してやんぜ!』

カジャが二人と戦っている間にサヤカとアルフは倒れているアピスのもとへ行って保護しました
彼女はひどい火傷を負ったものの、命に別状はなさそうでした

『アピス!よかったぁ…
あのねっ…!あたしたちサンドラさんの家から、遠くでドラゴンたちが戦ってるのが見えてさ…!それでみんなで様子を見にきたの!そしたらアピスが倒れててさ…!生きてて…よかったぁ…うぇ、うえぇぇーん!』

回復魔法をかけながら、嬉しくて大声で泣きだしたサヤカちゃん
泣きじゃくる彼女をまるで妹のようにアピスはよしよし…と優しく頭を撫でてあげました

『サヤカったら泣いてばっかりね…泣き虫さん
私なら大丈夫よ。それよりもあの子は、サニアはどうなったの?』

三人はキョロキョロと周囲を見渡すと、血だらけになったサニアが温泉に浮かんでいました

サニアの痛々しい姿を見たアルフは、お湯の中をばしゃばしゃ走って彼女のもとへ駆け寄りました

『えへへ…アルフだぁ……
またあえた…ね……』

辛うじて目を開けて、弱々しい声でアルフに話しかけるサニア…
ずっと会いたかった友達に再会できたのが嬉しくて、二人はぎゅっとお互いを抱き合いました

『だいじょうぶだよ。サヤカお姉ちゃんがさ、そんなケガすぐ治してくれるって!』

サニアをお湯の中から一生懸命運び出して、サヤカのところへつれていくアルフ君
一方、カジャと戦っていたオックスは窮地に立たされていました

『まぁ俺を相手によくここまで粘った…と言いたいが…
あいにくこっちは力の半分も出してねぇんだわ、遊びは終わりだぜ坊や』

リトアがかけた光属性の「強化魔法」のおかげで強敵カジャとも互角に戦っていたオックスでしたが
カジャが本気を出した途端、魔法によるバフもろともパンチ一発であっさりとやられてしまいました

『やっ!オックスにいちゃんが…!』

オックスが倒され、残ったリトアは傷ついたアピス達を守ろうとたった一人でカジャと戦い続けますが、
相手はあまりにも強くて「光の結界」で攻撃を防ぐのがやっとでした

目の前で仲間がどんどん傷ついていく姿を見て、サヤカは『やっ…、いやぁっ…!』と目からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちます。そんな時、彼女の武器である「妖精のハンマー」が淡い光を帯びだしました

『この光…あったかい…!』

その光を浴びたアピスとサニアの二人の傷がみるみる内に癒え、代わりにサヤカの持つハンマーの輝きがより強くなっていきました。まるで仲間たちが受けたダメージを吸収して、力に変えているかのようでした

アルフとの出逢いでサヤカが成長した事により、彼女の武器も「新たな力」に目覚めていたのです



『あたしが…守るっ!!』

強くなった「妖精のハンマー」を手にし、強敵の前に立ちはだかるサヤカちゃん
彼女の武器の力をすぐさま見抜いたカジャは冷や汗タラタラで『こりゃ…やっべぇな』と焦った表情を浮かべました

『みんなのくるしみを…思い知れーーー!!』

サヤカはそう叫んでカジャの頭にハンマーを振り下ろしました
ピコン!!!と凄い音がし、攻撃を食らったカジャの頭の上でヒヨコがピヨピヨ鳴いて踊りだしました

『ウソだろ~…こんなガキに不覚をとるたぁよー…
泣けてくるぜぇ…!』

カジャはそれを最後にお湯の中にぶっ倒れ、起き上がる事はありませんでした

『このヒトさ、死んじゃったの?』
『いいえ。サヤカのハンマーの能力でただ気を失ってるだけみたい』

戦いの後、倒れたカジャの前におそるおそる集まった子供たちは、
不思議な事にハンマーで強烈な一撃を受けたはずのカジャの身体に全くダメージが無いのに気づきました

「誰も傷ついてほしくない」サヤカの思いが宿ったその武器は敵を傷つけず、失神させるという形でみんなを守り抜いたのでした

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)