魔導物理学校がいよいよ夏季休暇に入り、アピスといっしょに街はずれにある彼女の自宅「ツリーハウス」へとやってきたリトアは、一人でせっせとお掃除していると誰かが玄関のドアをノックする音を聞きました
『やぁ!こんにちはリトア
家には今、きみ一人だけ?アピスはお出かけ中かな?』
やってきたのは以前出逢った貴族の少年「エルマ」でした
リトアはアピスが街へ買い出しに行ったため一人で留守番しているのだと説明すると、彼は優しい顔で微笑みました
『へえ!小さいのに偉いな…ところでさ、上がってもいいかい?
できれば僕もなかで彼女を待ちたいんだけど…』
以前森で助けてもらった事もあり、リトアは『もちろん!どうぞ!』と彼を快く家に入れてあげる事にしました
『たしかアピスの家は土足禁止だったな…くつを脱がなきゃ』
お行儀よくブーツを脱いで部屋の隅っこに置き、裸足でくつろぎながらアピスの帰りを待つエルマくん
『ねえ、きみとアピスはどんな関係なの?』
ふと好奇心に駆られ、リトアはベッドで読書している彼に質問してみました
エルマは本をパタッと閉じると『僕とアピスは友達さ 身分は違うけどね……』と穏やかな口調で語り始めます。
貴族の子供である彼は庶民の子供とは遊べない決まりになっているのですが、アピスとはときどき隠れて会ったりしているそうです
『アピスとはじめて出逢ったのは彼女が5歳の時だったんだよ
いつも一人で崖のそばに立って雲の下の方をじっと見ていたから、僕は何をしているの?ってきいたら、
地上へ行ってしまったお母さんに逢いたい。自分もはやくそこに行きたい …だってさ』
エルマはアピスの過去…かつて母親のダムキナが幼い彼女を置き去りにして地上に旅立っていった事を明かしました
母親が戒律をやぶった事で、たった一人残された5歳のアピスは「罪人の娘」と呼ばれて周りから忌み嫌われるようになってしまい、学校に入って才能を発揮するようになるまでいつも虐められ、辛い思いばかりしていたそうです…
『でもね 彼女の味方だった人も少なからずいたんだよ
ゼノフィリアス校長や魔法医のナスターシャさん、幼馴染のステファニー、それに僕やパパもね!』
エルマの話を聞いたリトアはこの魔法使いの国が戒律に支配されている事と、アピスが友達のステファニーをあれ程大切に思う理由…そして、彼女が地上を目指す「本当の理由」を知って切ない気持ちになるのでした。
コメントを残す