失われゆく星母樹とサニアの願い


サニアちゃんのねがごと

妖精の少女ミヤビと星母樹にやってきたサニアちゃんは天まで届くほどの樹の大きさに圧倒されました

『あたしたち妖精はね、この樹から生まれたの』
『えぇ~っ!?木から…!?』

樹から生まれたときいてサニアちゃんはビックリ
妖精族にとっては、この星母樹こそが”母親”と呼ぶべき存在だったのでした

ミヤビちゃんは靴が濡れるのも気にせず水の中をちゃぷちゃぷ歩いて、樹のそばに行って静かに祈りを捧げました

『(サニアもあんなふうに木にいのったら、ねがいが叶うんだね!)』

願いを叶える樹を前にしていよいよだとはりきるサニアちゃん
ミヤビちゃんのマネして水の中を歩いて樹のそばにいき、「心に秘めた願い」を打ち明けました

『サニアは…ヒトになりたいの!』

ドラゴンの子供であるサニアちゃんは人間の子供になる事を願いました
彼女には幼いながらも”切実な理由”があったのです…

旅立つ前、サニアちゃんにはアルフ君という同い年の恋人がおりました
幼い二人は種族が違っていてもお互いの事が大好きでいつも一緒に遊んでいましたが、同胞のドラゴンたちは異種族間の交流を許さずサニアちゃんを無理やり火山に連れ戻したのです。アルフ君と会えなくなり、彼女は寂しい思いをする事になりました…

「彼とおんなじ種族だったらいいのに」と考えてしまったサニアちゃんはある時”どんな願い事も叶えてくれる星母樹の存在”を知り、樹の力で人間にしてもらうために家を飛び出してここまで旅してきたのでした

『…あれ?
なんにもおきないよ?』

願いを伝えたのに何も起こらず、シーン…と静寂が流れました
サニアちゃんはがっかりして落ち込んでいるとミヤビちゃんと瓜二つの顔をした妖精族の少女がやってきました

『はじめまして…わたくしは星宮ほしみやミヅキ。ミヤビの姉です』

ミヤビの姉《ミヅキ》は頭に王冠をかぶっており、どことなく気品がありました

『ミヅキお姉ちゃんはね あたしのししょーなんだよ
でもって妖精の女王なの!』

ミヤビちゃんの姉が「妖精族の女王」だと知り、サニアちゃんはまたもやビックリです

『うふふ…あなたは竜の女王ルティアの孫娘さんなんですね
妹のミヤビを助けてくださって感謝しています。この子おっちょこちょいで方向オンチだから、わたくしいつも心配してるんですよ』

姉にニコニコした顔で恥ずかしい話をされて顔真っ赤になるミヤビちゃん
サニアちゃんは『なんでサニアのコトしってるの?』と尋ねると、女王は妹からテレパシーを通じて聞いたと答えました

『今は星祭の最中ですから、色んな大陸の人々が星母樹を観るために都を訪れています
あなたと同じように樹に願いを叶えてもらいにきた方も中にはいるでしょう…ですが、今は無理なのです
樹は枯れ始め、千年前にはあった”人々の願いを叶える力”は失われたのです…

星母樹が枯れ始めている…

女王の言葉は衝撃的なものでした
その声は優しく、そして悲しみに満ちていました

『木、かれちゃうの?こんなにキレイなのにさ?
なんか…かわいそう……』

弱った樹を見上げるサニアちゃんは辛い気持ちでいっぱいでした…

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