
《氷の大陸》にある小さな雪国シェロアイランドに住む8才の少年ニコラウスは、学校の帰りに雪が降りしきる林の中で長靴を履いた同級生の女の子クッカ・ヤンソンが雪と戯れているのを見かけました
『(おや?クッカじゃないか
彼女の家は逆方向なのに、何してるんだろう…)』
クッカちゃんとは同じ学年ですが、今日はお互い別々の講義を受ける事になって会うのはこれが初めてでした
スクールバッグをぶら下げている所を見ると彼女もこれから家に帰る途中の様ですが、彼女の家は反対方向なのでニコルは気になって『どうしたの?』と声をかけてみました。すると彼女は嬉しそうな顔でこちらへ走ってきました
『ニコル~!やっときたの♪
もー待ちすぎて足が棒になっちゃうとこだったの!』
クッカは青いゴム長靴を履いた足で地面をこすりながら『あのね…』と照れくさそうに言いました。
『あのねあのねっ…!
今日だけ、ニコルのおうちに泊まってもいい?』
彼女はニコルの家に泊まりたくて寒い中ずっと待っていたのだそうです
『えっ?僕はいいけどさ…なら、わざわざこんな場所で待たなくても学校で声をかけてくれればいいのに
風邪引いても知らないよ?』
クッカは『あたし寒いの好きなの♪』と笑っています
人と雪の妖精《ルミハルティア》との間に生まれたハーフである彼女は、寒ければ寒いほど逆に元気になる体質なのです
『ねぇー、あたしずっと立ちっぱだから疲れちゃった
はやくおうちへレッツゴーなの!』
クッカちゃんはニコル君の手をぎゅっと掴んだかと思うとそのまま元気に走りだし、彼の手を引っ張りながら全速ダッシュで彼の家に向かいました。運動が苦手なニコル君は『ひぇ~!』と悲痛な叫びをあげます
『ちょっ…どこが疲れてるのさ~!』
『ゼェ…ゼェ…もうダメ…!おなか痛い…!』
走った末やっと家に着いて、ニコル君は疲れ果ててクタクタになって地面にへたり込んでしまいます。眼鏡もズレたその情けない姿をみてクッカちゃんは「もう~っ!」と怒りながら彼に言いました
『ニコルったら体力なさすぎっ!
いっつも本ばっかり読んでるからそうなの!少しは運動もしないと将来ビョーキになっちゃうんだから!』
さんざん走ったあげくに叱られてニコル君は踏んだり蹴ったりです。『もうカンベンしてよ~…』と文句を言いながら家の中に入ると彼の母親が玄関で二人を暖かく出迎えました
『お帰りニコル、あらクッカちゃんも!
ゆっくりしていってね!』
クッカちゃんは『こんにちはっ♪』と丁寧に挨拶した後、今晩は家に泊めてほしいと伝えました。彼女の照れくさそうな仕草を見て、ニコルの母は『なるほどねぇ…うふふ』と何かを察した様子でした
『ねえ、ニコル!本読んで~!』
ニコルの部屋にきたクッカはスクールバッグを床に降ろし、さっきとは打って変わって「本を読んで!」とねだってきました。彼女の態度の変わり様にニコル君は呆れつつも、一冊の本を出してベッドの上で読み聞かせてあげました
それは遠い昔、地上に住んでいた魔法使いたちが空へと旅立った時の物語でした。
『昔々…地上に住んでいた魔法使いたちは人々からその力を怖がられて迫害されていたんだ。そんな時、一人の偉大な魔法使いが現れて仲間たちにこう呼びかけた…「みんなで空に引っ越そう」って。それから魔法使いたちは魔法の力を結集して島ごと空に浮かばせ、そこに魔法使いだけの王国を築いたんだ。』
クッカちゃんは彼の話にすっかり夢中でした
『それでそれで!
魔法使いたちはどうなったの?はやくつづき読んで!』
せっかちな彼女は物語の続きが早く知りたくてニコル君に早く続きを読んでとせがみます。その時、リビングの方からニコルの母親の『二人ともごはんですよ~!』の声が聞こえました
『ねぇ聞いた?ゴハンだってさ♪
あたし、おばさんの料理大好きだから楽しみなのっ!』
クッカちゃんは今度は早くご飯が食べたくなって、長靴を履いてドタドタと走っていきました
『クッカのやつ、ホント忙しいなぁ…』
落ち着きのない彼女にニコルはやれやれと呆れ気味です
本当は一人で静かに過ごすのが好きな彼ですが、明るくて活発なクッカちゃんと一緒にいるのもマンザラではなさそうでした。
クッカちゃん(8)のコメント
今日はね、パパとママの結婚記念日だったの♪ふたりっきりで過ごさせてあげたいから
おジャマむしのあたしはニコルの家に泊まる事にしたの。
あのねあのね!彼に本のつづき読んでもらっている時にね…窓の外を流れ星がよぎったの!
シェロアイランドでは「流れ星を一緒に見た男女同士は将来結ばれる運命」だって、ずっとむかしから言い伝えられてきたんだってさ♪あたしのパパとママもそうして結ばれたらしいって♪
もしあたしがニコルのお嫁さんになるなら…
頭はいいけど頼りない彼のお世話を目いっぱいしちゃう予定なの!えへへへへ♪
今夜はとっても嬉しいから思う存分甘えちゃうの~♪

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