
ミヤビちゃんの
《氷の大陸》への出発前夜…魔法使いの少年ジョバンニと街で再会したサニアちゃんは彼が自分たちと同じホテルに宿泊しているのを知り、ミヤビちゃんやアピスちゃんと一緒に彼の部屋へ遊びにいきました
『一人部屋だから狭いけどさ、ゆっくりしてってよ♪』
サニアちゃんは部屋に入るなり『ヤッホー♪』と靴を脱ぎ散らかしてベッドにダイブしました。彼女が布団の上で楽しそうに跳ね回るのをみてミヤビちゃんも一緒にやりたくなりましたが、今は照れくさいのでぐっとこらえる事にしました
『あれ?キミさ、前にどこかで会った事ない?』
『さ、さあ…初対面だと思うけど。』
ジョバンニ君はアピスちゃんをみて彼女に見覚えがあると言います
彼にじっと見つめられたアピスちゃんは、顔を真っ赤にして隠れるように後ろを向いてしまいました。これまで男の子と接した経験があまり無いのかソワソワしていて落ち着かない様子です
『あ!わかった!きっと王女さまのお世話してるのを見たんじゃないかな?
アピスは王女さまの教育係だったんだって!』
ミヤビちゃんに彼女の素性を聞かされるとジョバンニ君は『マジ?』と驚きました
『その年齢でスゲーじゃん!優秀なんだな♪』
『ど、どうも……あの、私やっぱり部屋で休んでる!』
アピスちゃんは恥ずかしそうに両袖で顔を隠しながら走り去りました。サニアちゃんがそれをみて『アピス…もう帰っちゃうの?』と寂しそうな顔をするので、ジョバンニ君は『アピスは疲れたから休むってさ♪代わりにボクたちが遊んであげるよ!』と陽気に笑い、手品やカードゲームして彼女と遊んであげました。
『ふあぁ~…ねむたい~
ジョバンニ~!ひざまくらして!』
遊び疲れたサニアちゃんはジョバンニ君の膝の上ですやすや眠ってしまいました
『ありゃ?ぐっすり寝ちゃったよ』
『今日はずっと動きっぱなしだったから、きっと疲れちゃったんだよ』
魔導要塞の戦いでサニアちゃんが一生懸命頑張ってくれていたのをミヤビちゃんは思い出しました。クオンの都を護るために魔法使いたちと必死に戦った彼女は今はぐっすり眠っていてとても気持ちよさそうでした
『うふふ…カワイイ!まだ5つなんだって
あたしより年下なのに、あんなに勇気があってみんなを護れる力があるってすごいな…』
眠りこけているサニアちゃんを慈しむように、ミヤビちゃんはほっぺたをそっと撫でてあげました
『ドラゴンの女王の子供だしね。才能も凄いだろうけど、厳しい特訓だらけの毎日だったんじゃないかな?いつも明るく振舞っていたけど、きっとボクたちには想像もつかないような苦しみを彼女はたくさん味わってきたんだと思うよ。』
『そう…だよね……』
ジョバンニ君の言葉をきいてミヤビちゃんは思いました。自分は妖精の女王である姉のミツキと仲良しだし、巫女の修行は大変だったとはいえ都の人々が親切にしてくれたおかげで暖かい日々を送ってこられた
でも、サニアちゃんはそうじゃなかったのかなと…
クオンで見た彼女の姉ソニアは妹が傷付こうが構わない冷酷な人物だったのを思い出して、もしも「自分の姉があんな人だったら」と思うとミヤビちゃんは悲しくて、胸が苦しくなりました。
「サニアのために何かしてあげたい…」
そう強く願った時、彼女のポシェットの中で何かがポワァ…と暖かい光を放ちました
『だいじょーぶ!諦めずに練習を続ければそのうち《結界魔法》も使えるようになるさぁ♪
ボクのカンだけどねっ♪』
彼女の気持ちを察してジョバンニ君が言いました
ミヤビちゃんは『うん…あたしがんばるよ!』と頷きますが、ポシェットから漏れる謎の光には気づいてない様子でした
『あ!!もうこんな時間…そろそろお風呂に入らなきゃ!
サニア起きて~!』
ミヤビちゃんはサニアちゃんの体をゆさゆさ揺らしますが、彼女は『アルフ~…そこはダメ!やぁ~っ…!』と何だかよく分からない寝言を言っていて起こすのが可哀想なぐらい気持ちよさそうに眠っていました
『サニアったら、夢でアルフくんと遊んでるみたい!』
せめて夢の中でぐらい好きな男の子といさせてあげたい…ミヤビちゃんはそう思い、彼女をこのまま部屋に泊まらせてあげられないかジョバンニ君に頼んでみます。彼は『もちろんオッケーさ♪』と快諾してくれました
『小さい女の子が一人増えるぐらい構わないさ♪』
『ありがとう!この子ときどきオネショする時があるから気を付けて!じゃ、あたしお風呂行ってくる!』
サニアちゃんを今晩だけジョバンニ君に預け、ミヤビちゃんは女湯に向かいます
途中で『そうだ!せっかくだからアピスもお風呂に誘っちゃおう』と考えた彼女は女湯に入る前にいったん自分の部屋に戻り、そこでアピスちゃんが”不思議な魔法”を使っているのを見ました。
『靴がやぶれたから”縫合魔法”で縫っているの
空の女の子はこうやって魔法の針で糸をつくって自分で服を直すのよ。』
アピスちゃんは実際に魔法の針で糸を紡ぎ、靴のやぶれた個所を修復するのを実演してみせました
『すごい!ちゃんとくっついてる!縫合魔法かぁ…あたしにもできたらいいのになぁ~』
『やり方は簡単よ。あなたもやってみる?』
アピスちゃんに勧められ、やり方を教わりながらミヤビちゃんは縫合魔法の練習に励みます
最初は魔法の糸を上手く精製できなくて涙を浮かべていましたが、お裁縫自体は姉に教わってて得意だったせいかすぐにコツを掴んで上達していくのをみてアピスちゃんは『その調子!』と応援しました
『なつかしいな…クラウディアにもこうして教えたの
彼女、手先が不器用で上手に縫えないからって毎回私に服を直させていたのよ。『わらわの服を縫合する事を許します!』ですって。困ったお姫様でしょ?』
そう言い、アピスちゃんは苦笑いを浮かべます
ミヤビちゃんはワガママな王女に彼女が振り回されている所を想像してクスッと笑いました
『仲良しだったんだね。』
『うん…でもクラウディアが母君を失くして泣いてた時も、その後も…私は何もできなかった
何もしてあげる事ができなかったの……』
アピスちゃんは後悔と寂しさが入り混じった顔で、うつむきながら言いました
彼女と王女の間に何があったのだろう…
ミヤビちゃんは気になりつつも、アピスちゃんが自分から話してくれるまで待つ事にしました。

その晩…王冠をかぶった一人の少女が魔法のオーヴとともに空の庭に佇んでいました
彼女こそは魔法使いの国フリューゲルを統治する者
魔導女帝クラウディアでした
『待っていなさい…
わらわが必ず”おまえの願い”を叶えてあげますからね』
深い孤独を抱えた幼い女帝はオーヴと心を通わせ、その”切なる願い”を静かに聞き入れたのでした。

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