対決!フリューゲルからの刺客


魔法使まほうつかいとのたたか

サニアと妖精の女王が魔導要塞へ向かった後、地上に残ったアピスたちの前に魔法使いの集団が現れて三人を取り囲みました

『国家反逆者アピス!クラウディア女帝からお前を本国に連れ戻せと命じられている!
大人しく我々とフリューゲルへ帰るのだ!』

強引に帰還を迫ってくる魔法使い達をみてアピスは怯えた風に後ずさりして距離を取ろうとします。連れていかれれば今度こそ処刑が待っているのが分かっているからか彼女は額に汗を浮かべ、表情は不安でいっぱいでした。ライは『くそが』と悪態をついて魔法使いの一人を殴り倒しました

『クソッタレ…どいつもこいつも、嫌がるガキを無理やり連れて帰ろうとしやがってよ!
てめぇら心底ヘドが出るぜ!』

ブチギレしたライに対し、魔法使い達は次々と杖を取り出して敵意を露わにします

『いいかよく聞けよ、チンチクリン娘
コイツらはどうあってもお前を連れて行くつもりだ。もしお前が敵に連れ去られたと知りゃ、俺様の妹分がワーワーうるせぇんだよ!これはお前の戦いだろ!もう逃げんな!俺様が加勢してやっからこのクソヤロー共をぶちのめしてやれ!!』

ライの言葉をきいてアピスは少しだけ勇気が出たのか、
杖を左手に持って身構えました

『分かったわ。本当は戦いたくなかったけど…
お願いクルック・オイレン、なるべく誰も傷つけないで敵を追い払って!』

アピスが呪文を唱えると、彼女とライとミヤビの体が風のベールに包まれました

『うおっ!体が軽いぜ!』
『これが風の魔法…あたしこんなのはじめて見たよ』

《風の魔法》による肉体強化の恩恵を受けたライは『はっはーッ!これなら誰にも負ける気がしないぜ!!』と叫び、目にも止まらぬ疾風怒濤の動きで魔法使いをバタバタと殴り倒しました

『クッ!野蛮な地上人め…我々の任務を妨害する気か
きさまらもヴァルハラに送ってやる!』

ライと魔法使い達の激しいバトルが始まった頃…
魔導要塞が迫りつつあるクオンの都では魔法使いとは全く別の「強大な力」が目覚めようとしていました。

『フハハハハッ!!
ついに力が戻ったぞ!!』

かつてクオンの都を襲撃し、妖精の女王の結界に捕らえられていたソニアが力づくで結界を破って出てきてしまいました

『あの女め、よくも私を結界で封じてくれたな
たっぷりお礼してやるぞ…こんな都今すぐ燃やしてやる…いや、それよりもっと楽しめそうな相手がいるか
私の憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ!』

フルパワーになったソニアはこれまでに受けた屈辱と鬱憤を晴らすために目の前に現れた巨大な要塞相手に大暴れしてやろうと物凄い速さで飛んで向かっていきますが、途中で『ムッ!?』と急停止しました

遠くで農家らしき「幼い姉妹」が数人の魔法使いに襲われているのを見つけたのです

『下衆どもが!!』
ソニアは爆速でそちらに向かい、魔法使い達に蹴りの嵐を浴びせて彼らを空の果てまでぶっ飛ばしました

『フハハハッ!何という弱いやつらだ
この私の敵ではないわ!』

危ない所を救われた姉妹はソニアにお礼を言いました。

『勘違いするな…
よってたかって弱者を嬲る戦士の風上にも置けぬクズ共に制裁を下しただけよ』

ソニアは姉妹にそっけなく言いますが、妹の方は幼いためか「助けてもらった」と信じ込んでいるようです。その小さくてあどけない姿にソニアは妹のサニアの姿が重なって見えました

『フン…どうとでも好きに思えばいい』

さっきまで暴れる気満々だったソニアは気が変わり、魔導要塞に行くのをやめて都に残る事にしました

『(感じるぞ…
お前は今あそこで闘っているのか…サニアよ)』

『たった8年の間に争いはより激しく、複雑化していった
そして…その心労が原因で先代のシルフィナ様は病に罹り、亡くなられた。おかげで母君を失くされたクラウディア王女は悲しむ暇も与えられぬまま女帝の座を引き継ぐ事となった。今指導者を失えばわが国は地上人に飲み込まれてしまうからだ。』

「全てはお前たち地上人を受け入れたせいだ」

そう語ったデイモス卿の言葉には、地上人に対するどす黒い怨嗟が込められており、
サニアちゃんはふと”ある人物”が頭を過りました

『サニア、むずかしいコトよく分かんないけどさ…
あなたオババさまにそっくり!種族がちがうのをぜんぶ悪いコトって決めつけてる!そんなのおかしいよ!!』

デイモス卿はククク…と笑います

『小さいのにハッキリ物を言う子だ。素晴らしい
だが実際あの馬鹿な政策が始まるまで約1000年間、我が国は平和だった。それを地上人達がぶち壊したのだ。それもたった8年でな。やはり地上人の愚かさは昔と何も変わらん…君も本当は人々が許せんだろう?シルフィナの親友であった妖精の女王よ』

妖精の女王はしばしの沈黙の後、デイモス卿に言いました

『…そうかもしれません。だとしても、
星母樹の力を兵器に悪用して地上を侵略しようなんて…あなた達が行っている事はシルフィナが願っていた事と真逆です!こんな事をあの母親思いの心優しいクラウディア王女が望んでいると言うのですか!?』

『勿論だとも…クラウディア女帝がね』とデイモス卿はクククッと笑いながら答えました

『さてと…話はここまでにしよう。この作戦が終わるまでそこでじっとしていて貰うよ
怖がらなくていい。幼子の扱いには慣れているからね』

『あはははは!!
く…くすぐったい~っ!!』

突然サニアちゃんの影から触手がうにょうにょと生え、それが彼女の服の中に侵入してくすぐり攻撃を仕掛けました

『我が影の魔法はお気に召したかな?
事が済むまで、そこで影の触手と遊んでくれたまえ』

触手がサニアちゃんを足止めしている内にデイモス卿は本を通じてクリスタルに思念を送り、
魔導要塞の舵をクオンの都の方へ急がせます

『まもなくだ…クオンの都を攻め滅ぼし、星母樹を我らフリューゲルが独占してやる…ハハハハ!
愚かな地上人共よ!我々の怒りを思い知るが良い!』

サニアちゃんは今度は靴を脱がされて足の裏をくすぐられ、笑い転げていて動けません

『(やってくれますね。あらゆる攻撃を遮断するわたくしの結界と言えど、悪意のない行為の前には無力…
流石はデイモス卿…なんて嫌らしい…!)』

相手がまだ幼いと見てなるべく傷つけないように、それでいて最も有効な絡め手でこちらを上回ってくるこの老獪な男に妖精の女王は腹が立ちつつも何も出来ず、デイモス卿は勝利を確信して高笑いします

けれども、辛い特訓の日々に耐えてきた竜の少女は「そこらの子供」とは一味違いました。

『うぇ~…きもちわるかったぁ~
ヘンなこうげきしてさ!もーアッタマきた!!』

触手を力づくで振り払ったサニアちゃんは炎の翼を広げて空高くまで飛び、頭巾を外して「本気モード」になりました。その姿を見たデイモス卿は彼女が竜の女王の血を引く特別なドラゴンの子だと気付いたようです

『(何という事だ…
だとすれば、あの少女をオーブに近づかせるのは我が国にとって危険すぎる…
だが逆に彼女をこちら側に引き入れられれば……)』

デイモス卿が何かの思惑を巡らせている間にサニアちゃんはとんでもない速さで彼の頭上を抜き去り、
クリスタルにキックを当てて粉々に粉砕
しました

動力を失った魔導要塞はグォォン…と鈍い音をたてて停止し、デイモス卿のクオン侵攻は阻止されたのでした

『我々の完敗だな……サニアといったかな?
君の事をみくびっていたようだ』

デイモス卿は驚くほど冷静沈着で、自らの作戦を打ち砕いた竜の少女の活躍っぷりに対して『素晴らしい!』と拍手して称えました。その態度にサニアちゃんは『なに?負けたくせにさ!』と不満を露わにします。

『さらばだ…紅き竜の少女
いずれまたどこかで会いたいものだ。』

デイモス卿はそう言い残し、フッ…と影のようにワープして要塞から姿を消しました。

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